DV被害者の住所誤送付で研修会 足立区

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DV被害者の住所誤送付で研修会 東京 足立区
2018年6月26日 21時00分

東京 足立区がDV=ドメスティック・バイオレンスの被害者の住所が記載された書類を元配偶者側に誤って送付していた問題を受けて、区は25日、窓口業務を担当する職員を対象に再発防止のための研修会を開きました。

足立区はことし2月、元配偶者からのDV被害を訴えた区民について、住所などが相手側に開示されないようにする措置をとりましたが、その後、元配偶者が依頼した弁護士からの請求に応じて、住所が書かれた書類を誤って送付していました。

この問題を受けて足立区では25日、職員を対象にした研修会を開き、はじめに戸籍住民課の担当者がミスが起きたいきさつについて説明しました。

それによりますと、当時、パソコンの画面に「被害者の住所は開示が制限されている」というメッセージが表示されたにもかかわらず、窓口の担当者は請求者が加害者本人ではなく弁護士だったため、開示できるものと勘違いして発行してしまったということです。

25日の研修では弁護士であっても情報を開示しないことを改めて徹底していくことや被害者の情報をシステムに入力する際には記入漏れがないよう複数の職員でチェックすることなどを確認していました。

足立区戸籍住民課の薄井正徳課長は「被害者の個人情報は命に関わるものであるのに今回漏えいしてしまい大変申し訳ない。二度とミスが起きないように職員の意識改革をして今後の業務に当たりたい」と話していました。

相次ぐ漏えい 過去には殺人事件も

DVやストーカーの被害者は、被害者本人以外が住民票の写しや住所などの個人情報を閲覧するのを制限するよう、法律上、自治体に求めることができます。

しかし、自治体のミスによる情報漏えいは全国で相次いでいて過去には殺人事件も起きています。

平成24年には神奈川県逗子市で、当時33歳だった女性が元交際相手の男にストーカー行為を受けた末に殺害されました。

この事件では、被害者は個人情報の閲覧制限を市に申請していましたが、事件の前日、加害者から依頼を受けた探偵業者が夫をかたって市の納税課に電話し、住所が漏れていました。

このほかにも、最近では東京 世田谷区や広島市、先月には岐阜県関市でも、DV被害者の住所が記載された書類を誤って加害者に送ってしまい、被害者が再び引っ越しを余儀なくされるケースがあとを絶ちません。

いちばんの目的は被害者保護

こうした状況を踏まえ、総務省はことし3月、加害者が依頼した弁護士は加害者と同じものとみなして、情報開示を拒否するよう通知するなど、全国の自治体に対応の徹底をたびたび求めています。

DV被害者の支援に詳しいお茶の水女子大学名誉教授の戒能民江さんは「被害者情報の閲覧を制限する制度は、被害者保護がいちばんの目的であり、弁護士であろうと行政書士であろうと、第三者には絶対に漏らさないのは当然のことだ。住所が漏れることで被害者の生活が脅かされることを十分理解して自治体は被害者の情報の取り扱いについて、すべての部署で共有する必要がある」と話しています。