山梨県富士吉田市商工会議所「断固反対!クールビズ」

2018.6.29 14:00

 富士北麓の代表都市、山梨県富士吉田市の商工会議所が製作した地元の織物産業をPRする動画が、インターネットで話題を呼んでいる。「断固反対!クールビズ」と訴えるこの動画。地球温暖化対策に反対しているわけではないが、官公庁や企業でクールビズが当たり前となった今、あえて異を唱えたい思いとは…

富士吉田市の3つの特産品を紹介する各30秒の動画は、こんなかけ声で始まる。ミネラルウォーター、吉田のうどん、そして注目の「織物編」だ。

 動画はスーツ姿の2人の若者がトイレの鏡の前でネクタイを締める場面から始まる。1人が「いっそ、年がら年中クールビズって、どうよ?」と言うと、もう1人が「あー、それ、賛成っす!。賛成、賛成、賛成…」と応じる、それでも、両手はネクタイの結び目をしっかり締めていく。

 そこに「断固反対!クールビズ」とかけ声。ネクタイを製造する映像とともに、「ネクタイ生産日本一 吉田の織物」と紹介していく。

 動画投稿サイト「ユーチューブ」では6月22日現在、2000人近くの人たちが再生している。

市の認知度に危機感

 動画制作のきっかけは5年前の平成25年6月。富士山が世界文化遺産に登録されたときだったという。

 富士山や絶叫マシンの富士急ハイランドは誰でも知っているのに、富士吉田の知名度は高くない。関東商工会議所連合会プロジェクトチーム報告(平成22年度)でも、約1000人のうち山梨県のなかで富士吉田市の地名を「知っている」と答えたのは3割弱だったという。

 さらに、「若い人にブドウやワインは知られているが、山梨の工業製品は知られていないと感じた」と富士吉田商工会議所の渡辺博専務理事は指摘する。

 東京ネクタイ協同組合の最新のネクタイ実態調査(平成27年)によると、ネクタイ生地の生産量は、山梨県が215万2000本で全国一。2位の八王子(東京都)の74万8000本の3倍近い生産量だ。同商議所によると、山梨県内の生産地は、富士吉田市と隣の西桂町がほとんどだという。

 クールビズの「標的」となって久しいネクタイへの思いと、生地生産の一大拠点としての存在を訴えたいとの思いが、動画につながっている。

 渡辺専務理事は「意表をつくタイトルだが、その斬新さで富士吉田に織物産業など多くの名産品があることを全国に人に知っていただきたい」と訴える。

 同商議所の渡辺義広事務局長も「若者に親しみやすい動画にした」と振り返る。「見た人に引っかかりのある動画を、ということで監督に依頼した」(経営指導員の加々美昭彦さん)という。

 動画で「断固反対!クールビズ」と訴えている富士吉田商工会議所。果たして職員たちはどんな服装で働いているのか。確かめたくなり、訪ねてみた。

 すると、男性職員はみんなスーツ姿で、地元の郡内織物のネクタイをして「断固反対!クールビズ」を地で行っていた。

 渡辺事務局長は「デスクワークのときは外しても、会員さんなど人と会うときはネクタイをするのが基本。郡内織は生地が薄い夏用のものもあるし、富士吉田市は各月とも甲府よりも平均で4度ほど気温が低い」と話す。涼しさもネクタイ着用を後押ししている。

http://youtube.com/watch?v=MkbUy8scJ70
http://youtube.com/watch?v=BfhrbHxwwSE
http://www.sankei.com/smp/premium/news/180629/prm1806290002-s1.html